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◇変わる子供、余裕ない学校…教員巡る環境も一因
「殺人」や「セクハラ」といった不適切な内容の試験や授業が各地で相次いで発覚した。常識では考えにくい授業を、なぜ先生はしてしまうのか。関係者の声を集めると、問題となった教員の資質だけでは片付けられない事情も浮かび上がる。
「どこでも起こりうることだと思う」。教員の問題発言や行動について、愛知県の公立小に勤める30代の男性教諭はそう話す。「若い教員ほど、お笑い番組のネタや芸能人の物まねといった教科以外のことに頼りがちになる」。子供の興味を引こうと、テレビ番組などに頼る傾向があるというのだ。この手の問題が報じられると「すごいことするね」「ばかなことをしたものだ」と同僚同士で話題にはなる。だが、経験や力量不足の教員が子供を引きつけるには、お手軽なのだろうとも感じる。
◆現場の協力姿勢薄れ
教員の力量、家庭のしつけ、お笑い番組がはんらんする社会状況など、いくつかの要因が複合した結果だろうが、学校や教員の置かれた状況も問題の伏線にはありそうだ。
問題が発覚した舞台は、いずれも公立学校だった。「私立校では起こりにくい」と首都圏の私立中の女性教員は言う。「教育の質を高めなければ経営が成り立たない、という意識を学校全体で共有しているからかもしれない」
ある程度均質の生徒が集まる私立校と、多様な生徒が集う公立校との違いもある。
京都府の公立中のベテラン男性教諭は、問題が多発する背景に、教員社会の変化もあると考えている。「それぞれが教室の問題や悩みを話し合い、学び合って解決する気風は年々薄れている。教育現場で『成果主義』が強調されるようになったからだろう」
◆指導力養成の試み
大学でも、多様な指導を取り入れてはいる。
数人の学生を前に、ひとりの学生が緊張した表情で教壇に立つ。東京学芸大(東京都小金井市)の3年生を対象にした模擬授業だ。教員役の学生は10分の持ち時間で、目の前の学生を児童に見立て小学校の授業をする。事前に計画を立てて教壇に立つが、導入部は難しい。ビデオカメラも回し、どんな言葉や態度が効果的なのか検証もする。教育実習前に必ず実施している。
指導する山田雅彦准教授(教育学)は「学生は、模擬授業でも緊張して計画通りには動けない。実際の教室では、予想外の答えも返ってくるし、勝手に席を立つ子もいる。少しでも慣れてもらおうと考えた」とねらいを説明する。
今の小学校は「教師の話は聞く」「教室では席に着く」というルールが分からない子供も増えている。各地で相次いだ教員の問題も「それぞれの教員が逸脱した行為をしたというより、指導が難しい教室で過剰に反応してしまったのではないか」とみる。
子供への対応は「基本が大事」だと、学生には伝えている。「口癖や派手な服装、黒板の消しムラなど、注意を少しでもそらす要因は取り除く。そして教材をよく研究し、その面白さで子供の興味をひく。基本を徹底すれば、授業と関係のないことに力をさかなくても済むはず」
筑波大の庄司一子教授(教育臨床学)は「学校の先生たちは概して、一方的にしゃべり、子供の話に耳を傾けない。若い先生ほどその傾向がある」という。教員志望の学生を対象にした授業では、学生2人が向き合い、教員役が「生徒」の相談にのる練習をする。終わった後、教員役の学生は一様に「(生徒役の)沈黙が怖い」という。「教員の立場になると『自分の責任で間を持たせなければ』という意識が強くなるようだ。問題となった教員が持っていた『興味を引き付けたい』という意識と、どこか通じる」
庄司教授が強調するのは、「話を聴くこと」の大切さだ。「コミュニケーションとは話すこと、聴くことの相互作用。子供の意見や考えを引き出した方が、授業も深まる」
◆志望学生も戸惑い
教員を目指す学生にとっても、現場で起きていることは人ごとではない。
ある女子学生(4年)は、今回の問題を巡り、教員を目指す友人と話し合った。どうしてこんなことになったのか、教員や子供の様子は……。「現場には良い先生がたくさんいるはず。教員全体がおかしいわけじゃない。でも、私はどこまでできるのか。不安です」
◇「能力不足」認定者には研修受講義務
公立学校で教員の指導が問題となった場合、どのような対応が取られるのか。
教育公務員特例法の施行通知は「指導が不適切な教員」を▽教科に関する専門的知識、技術が不足し、学習指導を適切に行うことができない▽児童の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない--などと定義。これに当てはまるとみなされれば、最長2年の「指導改善研修」を受けなければならない。
「不適切」かどうかを認定するのは、その教員を任用した都道府県などの教育委員会。学校長などの申請があって初めて、その資質について問われることになる。
最近明らかになった問題の教諭は、現時点で認定は受けていない。愛知県の高校と山梨県の教諭は、現在も教壇に立っている。一方、岡崎市の教諭は退職。残りの2人は地元教委による独自の研修を受けているという。
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