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 ◇教育の幼稚園、児童福祉の保育所

 政府の「子ども・子育て新システム検討会議」は1、4両日のワーキングチーム(WT)で、10年かけて幼稚園(約1万3000施設)と認可保育所(約2万3000施設)を「こども園」に一体化する構想を示した。都市部を中心とした、保育所への入所を待つ「待機児童」問題解消策の切り札として打ち出したい政府・民主党は、年内に概要を固め、来年の通常国会への関連法案提出を目指す。しかし、目に見える政権浮揚効果を狙った今回の提案は「議論が性急過ぎる」との批判を招き、両日のWTでも現場関係者や有識者から異論が噴出した。実現へのハードルは高い。

 「(入園希望者を原則として受け入れる)応諾義務を一律に課すことは困難だ」。自らも私立幼稚園の園長を務める北條泰雅・全日本私立幼稚園連合会副会長は、4日に開かれた政府の「子ども・子育て新システムの検討会議」のWTで、「こども園」の政府案に反対を表明した。

 都道府県が認可する保育所は、市町村が入所者を決定するが、幼稚園は面接などを通して施設側が入園の可否を判断している。「こども園」はすべての子どもを対象とするため、定員超過など正当な理由がない限り希望者を受け入れる応諾義務が政府案に盛り込まれているが、幼稚園側は独自性を失いかねない。

 東京都内のある私立幼稚園の園長は「親と教育方針を共有できるかなどを尋ね、面接などで胃の痛む思いをしながら合格者を決めているのに、行政側が入園者を決めるようなルールができれば、それが成り立たなくなる」と話す。

 こども園への移行に向けた課題は応諾義務だけではない。親の就労状況に応じて、保育時間が10時間以上に及ぶ保育所と、基本は1日4時間程度の幼稚園とではカリキュラムも人員配置も全く異なる。3歳児以上を扱う幼稚園と、0歳から預かる保育所とでは求められる設備も違う。利用料も、保育所は所得に応じた負担を自治体が決めているが、幼稚園は各園が自由に設定している。

 池田多津美・全国国公立幼稚園長会長もこの日の会合で「家庭ではできない学校教育をするという位置づけ(の幼稚園)と、保育を必要とする子に対する手当て(の保育所)は分けて考えるべきだ」と述べた。

 保育所の利用者側も「利用者の期待は待機児童の解消。一体化によって量が増えても保育の質が低下しては困る」(保育園を考える親の会の普光院亜紀代表)と注文をつける。

 教育施設としての幼稚園と児童福祉施設である保育所とではそもそも文化が違う異なった存在で、その隔たりは大きい。

 ◇縦割り弊害、待機児童深刻 政権交代の成果急ぐ

 幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省と所管が分かれる。少子化の影響で定員割れの幼稚園が続出する一方、保育所では待機児童が急増するなど、縦割り行政は数々の弊害をもたらした。「役所の窓口で泣いた」「首長に陳情の手紙を書いた」。働く母親の間には、認可保育所に入るための都市伝説が流布するほど、待機児童問題は深刻化している。

 自民党政権も90年代から、二重行政の解消に向けた「幼保一元化」を議論してきた。小泉(純一郎)政権は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、06年には幼・保双方が教育と保育を一体的に行う「認定こども園」制度を始めた。

 しかし、同制度は双方が互いの一部機能を担うだけで、幼稚園は幼稚園、保育所は保育所のまま。二重行政の弊害は続き、手続きの煩雑さなどから4月の認定数は532にとどまる。一方、待機児童は3年連続増の2万6275人に達し、過去最悪の03年に匹敵する水準となった。

 その点、今回の「こども園」は、将来所管を「子ども家庭省(仮称)」に一本化する。幼稚園教諭、保育士で分かれる職員の資格も共通化し、「縦割り」の打破を目指す。

 ただ、政府が法制化を急ぎ始めた背景には、政権交代による強い「成果」を示したい、との思惑もちらつく。10月20日のWTで、吉田泉財務政務官が「幼保一元化……」と発言し、小宮山洋子副厚労相が「幼保一体化です」とたしなめる場面があった。「幼保一元化」は自公政権当時の表現だ。「旧政権とは違う」と強調したい思いが顔をのぞかせた。

 自民党政権時代は、保育界の族議員トップに橋本龍太郎氏、幼稚園界の族議員には森喜朗氏とそれぞれ元首相が君臨し、「一元化などきれいごとだった」(厚労省幹部)。当時より幼保間の垣根は低くなっており、地方の幼稚園には保育機能強化による入所児童増に期待する施設もある。

 それでも両者の間の壁は厚い。政府関係者は幼稚園、保育所の全廃も含めた今回の提案について「一番厳しいケースを示した」と漏らす。極論を提示し、議論を促そうというわけだ。だが、関係者の主張を取り入れ過ぎると、「一体化」が有名無実化しかねないジレンマを抱える。

 幼稚園の定員割れは郡部中心なのに対し、保育所の待機児童の84%は政令市など大都市に集中している。郡部の幼稚園がこども園に変わっても待機児童の受け皿にはならないというのが、多くの保育関係者の見立てだ。


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