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◇現場で野菜づくり…安定供給へ栽培法開発 オリジナルレシピ作成
◇「地場産」に親しみも
「キャンパスで命をはぐくむ体験を」と有機農業や生活園芸の実地演習をカリキュラムに入れる取り組みが大学でも行われている。「食農」や「食育」を通じて、身近に環境を考え、企業や地域の「エコリーダー」を育てる試みだ。
◇恵泉女学園大
東京都多摩市にある恵泉女学園大学では、学生たちがキャンパスに隣接した約70アールの「教育農場」で収穫した有機野菜を素材にオリジナルのレシピづくりを進めている。これらのレシピをもとに地元の南多摩保健所が10月、お弁当のおかずに合う野菜料理を紹介したリーフレットを作製した。
一つの皿で70グラムの野菜を摂取できる、いわば小皿料理のレシピ集。「ジャガイモ炒めバジル風味」や「にんじんとパプリカのサラダ」など、いずれも素材の味を生かして手軽にできるよう工夫されている。「昼ごはんには副菜として『小皿を二つ』と提案している。外食だと野菜が不足しがちなので、地域の飲食店を対象にした講座でも配布し、野菜料理の充実を呼びかけている」(同保健所)という。
「授業で行っていることが、地域の食の取り組みと結びついた」と、指導する澤登(さわのぼり)早苗教授(51)は言う。
教育農場は01年、教育機関では初めてJAS(日本農林規格)の有機認定を受けた。同大では88年の開校以来、1年生の必修科目に生活園芸を組み入れ、今年は約450人の1年生が農場でクワやカマを手に作業を行っている。農薬も化学肥料も使わない畑で野菜を育てながら、学生たちはさまざまな生き物たちと出合う。キャンパス内の落ち葉は堆肥(たいひ)に活用するので貴重な資源だ。
秋の季節はダイコンやハクサイ、ホウレンソウなどを栽培し、今月6、7日にあった学園祭では、学生たちが授業の現場である畑を案内する農場ツアーも行われた。
「生物多様性が大切といってもなかなか自分の生活と結びつかない。有機の畑が環境問題の『気づき』の場になり、農家の苦労も想像できる」と澤登教授は説く。
◇城西国際大
九十九里平野にある城西国際大学(千葉県東金市)では、「環境スペシャリスト」の育成を掲げて今春、環境社会学部を新設した。JR東金線の求名(ぐみょう)駅のそばにある実習農園では、1年生約40人が無農薬で野菜やハーブを育てている。障害者の就労支援などにも取り組む高橋幸男客員教授(62)が指導に当たり、学生たちは畑で汗を流しながら、農業や環境問題を体験的に学ぶ。
農園でサツマイモや千葉県特産の落花生の収穫を行っていた大場南さん(19)=同学部1年=は、「農薬を使わなくても野菜ができることを実感した。地場産の野菜に親しみを持つようになった」。
同県佐倉市にある大学所有の農園では、循環型コミュニティーを目指し、菜の花を栽培し、菜種油をしぼってその廃食油からせっけんをつくるプロジェクトも実施。園芸を心身のケアに役立てる園芸療法や、植物由来の芳香成分を活用するアロマテラピーなどもカリキュラムに取り入れた。「現場で学ぶ。自分の目で確かめる。全体の4割が体を動かす授業です」と同大の倉林眞砂斗副学長兼環境社会学部長(51)は説明する。
9月からは、「野菜工場」の実験もスタート。コンテナを改造した施設で温度や湿度をコンピューターで管理するなど、野菜の安定供給を図るのが狙いだ。「有機や自然農法が注目される一方で、農家は後継者難に直面し、地球温暖化など気候変動で異常気象も続いている。農家の負担を軽減し、安全な野菜をつくる栽培法を開発していく」という。
土に触れながら食や生物多様性を考える。「環境を学ぶことは、エコや農業関連のアグリビジネスだけではなく、里山の活用や生物多様性の保全にも取り組むことができる新しい『環境人材』につながっていく」と倉林学部長は強調する。
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