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学校行事で国歌斉唱の際に起立しなかった教師に対する東京都の処分をめぐって争われた訴訟で最高裁は、「戒告は基本的に懲戒権者の裁量の範囲」と示し、「処分は不当」とした2審判決を破棄した。その一方で減給や停職については、「慎重な考慮が必要」との判断から、2人の処分を取り消した。
社説の論調は大きく分かれた。不起立の教師には厳しい処分を-と求めたのが産経と読売で、朝日、毎日、東京は、戒告でさえ慎重に-との姿勢で一致する。「国旗・国歌」に対する考え方が根本的に異なっていることが浮き彫りとなった。
わが国では法律で国旗・国歌が定められ、学習指導要領でも国旗と国歌を尊重する態度を育て、入学式や卒業式では国旗を掲揚し国歌を斉唱するよう指導せよと明示されている。
「国旗や国歌を大切にするのは国民の素養だ。子供たちにも、きちんと教えなければならない」と説く産経は、判決について「大筋で妥当な判断」としながらも「停職や減給を行き過ぎとした一部判断には疑問が残る」と異を立てた。「子供に自国や他国の国旗・国歌に敬意を表すという国際常識を身に着けさせるのは、教師の義務」とした読売の見解も同様に、法や指導要領に沿ったものである。
しかし朝日は「日の丸・君が代は戦前の軍国主義と深い関係があり、その評価は一人ひとりの歴史観や世界観に結びつく」と論じ、「個々人に強制するものであってはならない」(毎日)、「自然で自発的な国歌斉唱こそ望ましい」(東京)とした2紙とともに、「国旗・国歌」は個人の自由にかかわる問題だとの主張を鮮明にした。判決が処分への歯止めになるとの視点でも共通している。
「停職は行き過ぎ」として処分を取り消された教師は過去2年間で3回、不起立により処分を受けている。東京は「積極的に式典の進行を妨害したわけではない」との判断だが、産経は「そもそも卒業式など厳粛な式典の雰囲気を壊し、児童生徒に及ぼす悪影響を考えると、停職1カ月の処分はむしろ妥当」と厳しく論断した。
今回の判決は、橋下徹大阪市長が率いる地域政党「大阪維新の会」が成立を目指す教育基本条例案にも大きな影響を及ぼすものとみられる。
朝日は「大阪維新の会のメンバーは、判決をじっくり読んでほしい」と要望し、毎日も「最高裁の判決の内容も踏まえて議論してもらいたい」と訴えた。橋下市長は判決を受け、条例案の部分修正を表明した。
産経は「各地の教育委員会が処分をためらい、見て見ぬふりをしている教育界の悪弊が一層強まる」ことを危惧し、「教育委員会には、さらなる毅然(きぜん)とした対応を求めたい」と力説した。「不起立」にはあくまで厳しい態度で-とのスタンスだ。
日経は「日の丸や君が代をめぐる妨害と厳罰の応酬ほど、教育現場にとって不毛なものはない」と述べ、教育委員会と教職員は「双方とも、司法が示した『常識』をかみしめてほしい」と“仲裁”した。はたして双方の溝は埋まるのか…。
「国旗や国歌を政治闘争や裁判闘争の道具とする教師勢力がおり、さまざまな弊害がもたらされてきた」(産経)ことを考慮すれば、読売の見出しにあるように「最高裁判決で混乱収まるのか」との懸念の方がむしろ強いのではなかろうか。
卒業・入学のシーズンはもう目の前である。
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