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 全国の公立小中学校の30校に1校が姿を消す――おおむね5年間で1100の学校が減ることがわかった読売新聞社の調査は、学校の統廃合が自治体の大きな課題になっていることを浮き彫りにした。少子化が進む地方で何が起き、どんな課題があるのか。 

 ◆大規模な統廃合が頓挫

 市長リコール運動 出直し選

 青森市では、2012年度までに市立小中74校を45校にする大胆な統廃合計画が、昨年11月に頓挫した。公表後に説明を聞いた地域住民が猛反発したからだ。

 新校舎を11年前に建てた中心部の古川小を築32年の長島小に統合する――そんな計画に住民は違和感を持った。「通学路が狭くて除雪も行き届かない」「校舎の耐震性は?」といった疑問にも、市側は十分な説明ができなかった。

 長島小の方が教室数は多い。市教委は財政状況を考え、収容能力のある学校を拠点に1学年2学級以上の環境を作る方針を立てた。「住民の認識とズレがあった。だが統廃合は必要」と角井真・教育環境推進室長。21日には対象校や実施期限を示さない修正案を公表する。

 4年前に合併で誕生した福井県あわら市では、旧町に一つずつあった中学校の統合を巡って混乱が続く。

 合併協議では、老朽化した1校は新築、もう1校は改修する方向だったが、新市の市長は財政効率化などを理由に統合方針を表明。存続派市民がリコール(解職請求)運動を始めると、市長は昨春、辞任して出直し市長選に打って出た。当選したのは存続派。今度は議会が先月、2校存続案を否決、市長は再提案の構えだ。

 一方、住民主導が定着した京都市。東山区内の自治会やPTAが昨夏、小中7校を統合する一貫校新設を市教委に要望した。11年度開校を目指し、住民組織が、設備や制服などを協議中だ。「自治会が住民をまとめ、PTAが学ぶ環境を考え、学校や市は教育内容を決める」と市教委は役割の明確さに胸を張る。同様に、昨春は中学校5校が統合され、2年後には小学校3校も統合予定。30年ほど前には、統廃合を巡って子供に登校を拒否させる騒ぎが起き、その反省に立つ。





 ◆複式学級の指導法 継承の試み始まる

 少子化に伴う統廃合で、全国の公立小の複式学級は07年度で6259と、5年前より647減っている。ただ、鹿児島67増、宮城27増、福島24増など23府県では増加、地域差が大きい。

 複数の学年の授業を1人で同時進行させる複式学級は指導が難しいだけに、1072と全国最多の北海道では、経験豊富な教員の指導法を継承する試みが始まった。十勝地方の教員らによる研究団体が今年度から3人を複式指導員に指名、勉強会を開き、北海道教育大とともにビデオも作った。

 12日には同大釧路校で指導員の江口秀和教諭(38)が算数指導法を講演。「他学年を指導している時、子供には『自分でやらなければ』という意識ができるが、教材研究に手を抜いてはいけない」と訴えた。

 読売新聞社の全国調査 昨年11~12月に都道府県と1820の全市区町村の公立学校統廃合計画を調べた。その結果、小中学校はおおむね3~5年後に1117校減る見通しで、過去5年間の減少数に匹敵する規模とわかった。この種の調査は国も実施していない。





 ◆長距離通学課題に

 学校統廃合で最大の課題は通学手段の確保だ。

 長野県北西部の小谷(おたり)村で2年前、3校を統合してできた小谷小は、児童の8割、約140人がスクールバスで通い、通学に50分かかる児童もいる。村を南北に貫く国道から枝分かれして集落があるため、バス会社に6台を委託している。保護者からは体力低下を心配する声も上がり、昨秋からは、学校の手前約700メートルを歩かせる工夫もする。

 また、バスより効率的な10人乗りタクシー6台が、小中学生51人を運ぶ、徳島県つるぎ町の例もある。

 財務省が3年前に統合された小中学校221校を対象に実施した調査では、通学距離が6キロを超える子供がいる学校が122校、20キロを超える学校も12校。文部科学省によると、自治体のスクールバス保有台数は昨年度末で3426台と、2年前より93台増えた。

 文科省は公立小中学校の標準規模を12~18学級としているが、統廃合は自治体の判断を優先し、無理な統廃合は勧めていない。「地域社会を壊す」と小学校の統廃合はほとんどしない鹿児島県のような例もある。

 ただ、子供の人間関係を固定化させず、競争心を喚起でき、体育や部活動が活発になるといった点で、統廃合を進める自治体からは「国はもっと財政支援を」という訴えも多い。

 校舎新築費は最大で半分を国が補助するが、教室数や面積が細かく規定される。住民を納得させるため、規定以上に設備を充実した分は補助対象外。「国の補助率は実質17%」と説明する自治体もある。

 また、耐用年数が残る校舎は原則、公的な建物に転用しないと国への補助金返還が必要。跡地利用計画が進まず、統廃合に着手できない自治体も多い。





 ◆住民は前向きの議論を

 統廃合にはとかく、身近な学校が消えるという負のイメージが先行する。過疎地の学校は、地域に若い世代をつなぎとめる「かすがい」のようなものだろう。

 しかし現実には、統廃合を機に、設備が充実した新校舎で特色ある授業を始める学校が多い。住民との連携を深め、地域を見直すきっかけになった自治体もある。何より、多くの子供たちが「友達が増えた」と喜んでいる。

 住民の意見も聞かずに統廃合の方針を示すのは論外だが、住民はもっと前向きに議論していいはずだ。





 複式学級

 児童生徒数が著しく少ないため、2学年をひとつにした学級。公立義務教育学校の学級編制や教職員定数を定めた法律では、2学年合わせて16人以下、小学1年生を含む場合と中学校は8人以下を標準にして、都道府県の教育委員会が基準を定める。



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