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 ◇反復学習も大事だけど

 大阪府の橋下徹知事は学力テストの結果を重視、反復学習の導入を進めている。その大阪府と、成績上位の福井県の小中学校を訪ねた。ともに学力は「つながり」を重視する教育環境が支えていた。

 ◇荒れた学校から再生、「大阪の奇跡」貝塚四中 まず生徒会活動で連帯感、自主性・家庭学習にも波及

 教育関係者から「大阪の奇跡」と呼ばれる学校がある。府南部の貝塚市立第四中学校だ。教室の隣には、学年ごとの担任教諭の控室が並ぶ。「荒れていたころの名残。休み時間も生徒から目が離せなかった」。ベテラン教諭が小声で言った。

 経済的事情から就学援助を受けたり、一人親家庭の生徒が少なくない。喫煙や暴力が横行し、03年ごろには校内暴力が年80件程度に及んだ。2年前の学力テストは国・数ともに厳しい結果だったが、その後は2年連続で着実に成績を伸ばしている。ボランティア活動や部活動の盛り上がりも注目を集めている。

 再生の取り組みが始まったのは約10年前。教師らは「まずは生徒同士がつながる仕組み作りが大切だ」と生徒会の役割を強化した。27人という大人数の生徒会役員が月1回程「あいさつの徹底」「いじめ撲滅」などのキャンペーンを展開している。生徒会とクラブは月1回、校内のトイレ掃除をする。市や警察の要請があれば、町中の落書き消しにも出かける。渋々従うだけの生徒も周囲にほめられると徐々に積極的になるという。

 ◆居場所があれば

 「最初の2年は難航したが、3年生の懸命な姿勢に後輩があこがれて続いていくという良い流れができた」と語るのは、生徒指導の秦真人教諭(41)。「どの学校でも問題行動を起こす生徒は1割、黙っていてもきちんとできる生徒も1割。中間の8割がどちらに流れるかが鍵」と考え、生徒同士が日ごろの付き合いの中で学びあう環境作りを重視している。「どんな生徒でも学校に居場所があれば安定する」。それが今、機能しているという。

 その一つが、テスト前に希望者を対象に開く補習授業だ。2年の吉道沙耶さん(14)は「ここならいつでも先生に教えてもらえる。うちの学校はみんな仲がいいし、先生も面白くて楽しい」とノートを開いて笑顔を見せた。

 ◆内面からのやる気

 家庭での学習習慣にも着目して「自主学ノート」を取り入れた。その日の授業内容や自習内容を書いて翌朝提出する。不登校の生徒の家を訪ねて、ノートを預かり登校する生徒まで現れた。学力以上に強まったのは生徒間のつながりだ。ある教諭は「いわゆる『学力対策』だけで身につくのは表面的な学力。自分からやる気にならないと子どもは伸びない」と、「奇跡」の背景に「学び合い」があると語る。

 貝塚四中では週1時間、数学や英語の授業で、プリントを使って基礎学力の徹底を図っている。2年前まで「できる子」と「できない子」の格差が広がる二極化が目立ったが、今年は下の層が中間に移行し、全体を底上げした。出原浩一校長(56)は「学力には地域性などさまざまな要素がかかわっている。生徒会やクラブ活動、家庭学習など、取り組んできた成果が確実に表れつつある」と語った。

 ◇意欲高める仕掛け考えた 「人を大事に」「全体で成長」--松原七中

 授業中、2年生の教室から歓声が上がった。大阪府中央部の松原市立松原第七中学校。生徒がはしで小豆を皿から皿へ移し替える作業に集中している。最初は黙って見つめていた周りの生徒が声援や拍手を送り始めると、クラス全体が熱気を帯びてくる。「周囲の状況の変化で自分の気持ちがどう変わるのか、実感するのが目的。自分の状態を知ることが成長につながる」と深美隆司教諭(54)は語る。この授業は「人間関係学科(HRS)」と呼ばれ、全国から視察が相次いでいる。

 松原七中は、中国からの帰国生徒など日本語指導が必要な生徒も少なくない。深美教諭は「反復学習は大事だが、多様化の時代にそれがすべてではない。学習意欲に結びつくような仕掛けづくりを学校ぐるみで探るのが必要」と語る。プリントを使った反復学習もするが、学校全体で成長しようという取り組みに重点を置いている。

 その結果、生活状況調査で「宿題をする」「学校のルールを守る」など生活習慣が改善し、成績も上向き始めた。目的と手段がはっきりした反復学習だけでなく、生徒のつながりを重視した指導方法は貝塚四中と共通している。

 「うちの取り組みは目新しい挑戦ではない。昔から大阪で培われてきた『人を大事にする教育』の延長」。松原七中の糸井川孝之校長(55)はこう語って胸を張った。

 ◆中学は改革効果出ず

 今年の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、大阪府は小学校が算数で初めて20位台に入るなど順位が上昇した。しかし、中学校は横ばいで44~46位と「橋下改革」の効果は出なかった。この結果に橋下知事は「中学校は結果を重く受け止め、学力向上に真正面から取り組んでほしい」と注文をつけた。

 橋下知事は昨年の結果に「このざまはなんだ」と府教委を強く批判。「百ます計算」や漢字の書き取りなどの反復学習の導入を働きかけた。府教委は独自に教材まで作成したが、活用は小学校48%、中学校36%(3月現在)にとどまる。府教委は、中学校の結果を「組織的に反復学習に取り組んでこなかったから」などと分析し、今後の徹底を図る方針だ。

 ◇学力テスト成績上位の福井では 「家庭が安定」子に目が届く

 福井市内の閑静な住宅地にある市立中藤小学校は、市内4番目の大規模校だ。午前8時までに登校する児童に合わせ、担任は7時半までに出勤。子どもを教室で出迎えるため、職員朝礼はない。校区内は新興住宅地が増えるが、県内の他地域と同様に、共働きや3世代同居家庭が多く、保護者は学校に協力的だ。不景気の打撃を受ける保護者もいるが、学校生活に目立った影響は見られないという。

 特別な学力対策はしていない。岩佐明晴校長は「教師が毎時間きちんと授業をするのが一番大事。学力テストの点数がイコール学力なのかという思いもある」と語った。

 福井は60年代の学力テストでもトップクラスだったが、その背景に「家庭の安定」を挙げる意見は多い。福井は05年、3世代同居率全国2位(20・2%)▽持ち家比率同3位(75・8%)で、核家族の多い首都圏や関西圏とは対照的だ。関係者は「家族の目も届きやすく、早寝早起きや家庭学習もちゃんとやる子が多い」と語る。一方で、福井県の教師の一人は「福井の子はまじめな半面、積極性に欠ける。自分を表現できる大阪の子どもがうらやましい」と語った。

 県教委の担当者は「教育には地域性や風土がかかわっている。他の都道府県と比べた順位に意味はない」と、ひたすら点数アップを目指す動きに疑問を投げかける。


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