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各地で相次ぐ子供たちのいじめ。群馬県桐生市で小学6年の女児が10月に自殺した際には、いじめが原因とする遺族の訴えを学校側は当初否定した。民間団体が今月発表したアンケート結果からも、真相を知りたいという遺族の思いを踏みにじる学校の隠ぺい体質が改めて浮き彫りになった。
「何があったか知りたいという気持ちは、今も変わりません」。自殺や学校での事件・事故で子供を亡くした遺族らでつくるNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)が7日、東京都内で「親の知る権利を求めるシンポジウム」を開いた。パネリストの一人で、07年9月に中学2年の次男絢(けん)君(当時13歳)を自殺で失った近藤永子さん(44)=練馬区=が、悲しみをこらえるように語り始めた。
自殺から2カ月ほどたったころ、同級生からいじめを疑わせる話を聞き、「何があったか知りたい」という思いが募った。学校での様子を教えてほしいとかけ合ったが、学校側は「調査はしない」の一点張り。「近藤さんがいると意見が言えない」と保護者会への参加も拒まれた。
◆遺族が独自に調査も
近藤さんはクラスメートに独自にアンケートをした。その結果、絢君がみんなが見ている前で着替えを強要されたり、ズボンを取られたりしていたことが分かった。それでも学校は調査を拒否した。近藤さんに証言した生徒のうちの一人は教師に「君の見たことは間違いだよね」と何度も言われたという。近藤さんは「何があったか知るため、全部自分でやらねばならなかった。学校は息子の死をなかったことにしたいかのようだった」と振り返る。
同NPOは92~09年にいじめや暴力、教師の体罰などで子どもを亡くした遺族や後遺症が残る被害者の計110家族を対象に、今年2~9月、学校側の対応などを尋ねるアンケートを実施。51家族が回答した結果を、シンポジウムで公表した。
事件・事故について学校や教育委員会から自発的な説明や報告があったのは6家族だけ。8割に当たる41家族は「なかった」と答えた。また、学校や教委の調査を「適切」「ほぼ適切」としたのも計4家族にすぎず、40家族は「不適切」「あまり適切だと思わない」と回答。学校などが作成する報告書に「自殺」を「事故」と記載するケースなど、親の認識と異なる報告がなされている実態も判明した。
◆調査委は必要だが
学校側の調査に対する不信感を反映し、第三者による調査委員会については、条件付きも含めて38家族が「必要」と答えた。自由記述では「どのくらい被害者側に立って調査してくれるかが大事。形式的な機関ならなくてもよい」と懸念を示す声も目立った。
近藤さんは「教員の評価制度や昇進を考えた時、学校にとって(自殺などをオープンにすることは)タブーなのかもしれない」と感じる。同NPOの武田さち子理事は「知りたいと思う親の願いは切実。学校側にとっても、親と情報を共有することが再発防止の第一歩になるはず」と強調する。調査に協力した常磐大大学院の小林麻衣子スーパーバイザー(被害者学)は「死という深刻な被害が起きたのに経緯も知らされず、学校側からうそまでつかれると遺族は心身に長期的なダメージが与えられる。納得できないままだと、人生の再構築もできない」と話している。
◇教委頼みの究明には限界
2006年、福岡県筑前町や岐阜県瑞浪市などの小中学校で、いじめが原因と推測される児童生徒の自殺が相次いだ。文部科学省は都道府県の教育委員会や知事にあて、いじめの「チェックポイント」を送り、調査実施を通知した。
チェックは「学校用」と「教委用」。学校用には「いじめを行う児童生徒には出席停止などの毅然(きぜん)とした対応を取っているか」など26項目、教委用には「いじめの報告があったときには、事実を隠ぺいすることなく適切な対応をしているか」など18項目の質問を、それぞれ設定した。
しかし通知は義務ではなく、今回の桐生市教委もこのチェックを実施していなかった。文科省は「調査を義務付ける法令がない」との立場で、いじめの調査実施や調査委のメンバー選定は、各教委に委ねられている。通知から4年。教委頼みの調査に、明確な有効性は確立されていない。
00年9月、13歳の息子を自殺で失った東京都の大貫隆志さん(53)は「チェックでは教委や学校が不利な事実を書かない可能性もある。親族などを調査に加え、遺族側の見解も反映すべきだ」と話す。実際、09年度の少年の自殺者数は、各教委の報告をまとめた文科省調査(中高生)が165人なのに対し、警察庁調査(09年、19歳以下)は565人と3倍近い開きがある。
文科省も「教委を通した調査では事実が報告されていない疑いがある」と分析。11年度をめどに全国の約3万9000校の小中高校に対し「自殺の疑いも含め、すべての事案を発生1カ月以内に直接報告すること」を義務付け、実態を把握する方針だ。
一方で、遺族から自殺の兆候などを聞き取るのは、現在の方法では困難という指摘もある。教育評論家の尾木直樹さんは「子供を失った遺族は動揺しており、聞き取りにはカウンセリングができる臨床心理士をあてるなどの工夫が必要。当事者の声が聞けないと、事実誤認が生じて間違った防止策が立てられる可能性もある」と危惧(きぐ)する。
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