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 男子校で家庭科教育に力を入れる動きが強まっている。特に国立や私立の有名進学校で、その傾向が強い。調理や裁縫だけでなく、子育てや介護、男女共同参画といった今日的テーマを考えさせているのが特徴で、体験型学習のメニューも豊富。社会に貢献できる人材を育てるには生活や社会に密着した体験を積ませることが大切、と先生たちは話す。

 東京西部の私立桐朋中高(国立市)は2年後に家庭科室を新設する予定だ。これまでは調理実習でギョーザを作る時に生物室を使ったこともある。今は器具がホットプレートなので電気のブレーカーが飛ばないようクラスを半分に分けて実習している。家庭科室ができればガスがひかれ、本格的な調理が可能になる。

 ギョーザを作った時は市販品と手作りの味やコストを比べ、食品偽装まで学習を深めた。単に家事ができるようにする科目とはとらえていない。「家庭科は日々の暮らしの中から社会や世界を考えられる科目」と大矢英世教諭。家庭科室ができれば実習を増やせる、と期待する。

 家庭科室がない男子校も多い中、関西の私立洛星中高(京都市)には調理用具やミシンなどが整備されて裁縫もできる多目的用と家庭科専用の教室がある。高校には料理研究部(部員35人)もあり、2009年には全国高校生食育王選手権で優秀賞に輝いた。

 授業内容は現代社会の課題に直結するテーマが目立つ。

 9月、国立の筑波大学付属駒場中(東京都世田谷区)の中1のクラスで、植村徹教諭が「仕事と生活の調和」をテーマに授業をした。

 「中学受験するには専業主婦家庭のほうが良いのか?」

 入試から日の浅い1年生には身近なテーマ。活発な意見が飛び交った。

 「塾通いの弁当を作ったり、お迎えに来てくれたりするのは、専業主婦でないと難しい」「うちの母は働いていた。夜はコンビニで弁当を買える。口うるさく言われず、自分のペースで勉強できた」

 家事労働を年収に置き換えると約280万円、という内閣府のデータを植村教諭が示すと、さっそく時給計算を始めた生徒が「えー、低すぎるんじゃない」。男女の役割や分業へと議論が広がった。

 植村教諭は5年前から同校で家庭科を教えている。男女共同参画社会を身近に感じてもらおうと、2児の父として自らの子育て体験も語る。「うちの生徒は議論好き。結論を出すことは目的ではない。似た環境で育った生徒が多いので、家族や社会の多様さを学んでほしい」

 家庭科は1994年から男女共修になった。東京の私立御三家の一つ、麻布中高(港区)は「息子たちに、女性や子ども、高齢者と心豊かに生きることの価値を知ってほしい」と保護者らが運動したのをきっかけに、96年から中学では「生活科学」、高校では「生活総合」という科目名で家庭科を導入した。

 高1の夏休みには、産婦人科の病院での子どもの世話や遊び相手、老人ホームでのレクリエーションの手伝い、障害者の作業所で一緒に仕事をすることなど18のメニューから選べる体験学習がある。

 高1の佐野悠太君は山梨と長野の県境にある八ケ岳で有機野菜を作る農業体験をした。土づくりから始め、「有機が良いとか言うけど、そんなに簡単なことじゃない」と実感。「勉強ばかりしているよりも、身近なことができないと人間としてダメなんじゃないかと思いました」

 小谷教子教諭は「家庭科は人間力を育む。社会に出たときにリーダーになる人にこそ、生活者の視点を持ってもらいたい」と話す。

 男子校での家庭科教育を研究する伊藤葉子千葉大教授の話 いまの家庭科は調理や裁縫だけでなく、少子高齢化やワーク・ライフ・バランスなどの社会問題を扱っている。「社会の役に立ちたい」と考える生徒には、将来のビジョンを具体化させるために役立っている。社会に貢献するリーダーを育てたい進学校は、家庭科の重要性に気づき始めているのだろう。


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